2016年の株価は「中央銀行総裁への好き嫌いで決まるのではないか」、そんな記事を書いたのは、今年の初めでした。

2016年の相場は中央銀行総裁への好き嫌いで決まる?

そこから大荒れとなった世界の株式市場ですが、振り返ってみると、中央銀行総裁への支持率が、株価推移と連動しているのですから、驚きです。

 

投資家の支持率通り?

NO.1は「イエレン先生」

年初からの暴落に見舞われてた今年の世界の株式市場ですが、その理由は過去記事に記載した通り、産油国からの仕方ない売り、だったようです。そんな中、日米欧の株価指数の推移はどこも似たようなチャート形状になってはいますが、それでも一番強いのが、アメリカのNYダウ、次いで欧州代表のドイツDAX、そして恐ろしいほどダントツに弱いのが、日経平均株価となっています。

NYダウに関しては、昨年の8月の安値に届くかくらいなのに、日経平均に関しては、そこからさらに2,000円以上も売られてしまいました。なぜこんなにも差が出ちゃうんでしょう。常識的な話は過去記事でお伝えしたので、少し変わった見方もしてみたいと思いました。

それは、年初の記事でも書いたとおり、どうも、「中央銀行総裁の支持率」に比例しているように思われますが、どうでしょうか?

日米欧の中央銀行の総裁は、アメリカFRBの「ジャネット・イエレン議長」、ヨーロッパ中央銀行の「マリオ・ドラギ総裁」、そして我らが日銀の「黒田東彦総裁」です。

お三方の中で、投資家から圧倒的な支持を受けているのが、「ジャネット・イエレン」です。彼女は、FRB初の女性議長ですが、女性らしい懇切丁寧な仕事ぶりで、投資家からの信頼は厚く、彼女が会見を行うFOMCは、株高イベントと言ってもいいくらいです。彼女の会見の後に、株が下がることはほとんどなく、私の記憶では、リスクオフ真っ只中の、前回くらいなもんです。

当ブログでも尊敬の念を込めて、「イエレン先生」と呼んでいます。

 

NO.2は「ドラギ兄貴」

そして、彼女とは少し違ったタイプでマーケットから常に「恋される男」、がドラギ総裁です。彼はいつも惚れ惚れとする男らしい発言で投資家を鼓舞してくれます。彼の弱点は、いつもそれが行き過ぎてマーケットが熱に浮かされすぎてしまうと言うことですね。しかし、先日のECB理事会での発表では見事に投資家の恋心を取り戻したようです。

「これ以上の追加緩和は考えていない」と発言したことで、一時売られたようですが、すぐに買いが戻ってきています。彼が素晴らしいと思うのは、そういった周囲の「期待」を考えると怖いと感じることを、恐れず、きっぱりと伝える、と言うことです。これはとても素晴らしいですね。

12月の理事会では、緩和策が投資家の期待に届かず、世界同時株安のきっかけを作ってしまったような形になったのですが、そんなことにも、彼は一切ひるみません! 堂々と再び、世界の面前で、気難しい気ままな投資家と相対し、信頼を勝ち得ているのです。

これは、私たちビジネスマンもお手本とするべきではないでしょうか。私は、信頼を築くためには、「周りからの身勝手な期待は裏切る必要がある!」 と思います。彼も、当ブログの「先生」です。

 

「黒田総裁」の嫌われる理由

そして、非常に残念ながら、投資家から嫌われていると言ってもいいくらいなのが、我らが黒田総裁です。彼の会見の後には、株価が暴落することが多く、象徴的なのが、先日の「マイナス金利」の導入の場面で、株高がわずか数日しか持たず、その後、暴落となったことです。

あれだけ、リスクを取った、勇気ある決断をしているのに、投資家から全く支持されない。哀れさすら感じてしまいます。

 

このお三方への見方は私だけの独りよがりな物ではないと思います。以下に参考記事を載せておきます。

イエレン議長と黒田総裁の決定的な違いとは

では、この3人の違いとは何でしょう? そこには一つ決定的な要素があると思います。それはキーワードで言うと、「サプライズ」です。

 

よく言えば、サプライズだが・・

黒田総裁はよく「サプライズ好き」だと言われます。事前に予想も出来ないタイミングで「バズーカ」と呼ばれる規模の緩和策を導入します。前回の「マイナス金利」も完全なサプライズでした。彼自ら、数日前に「マイナス金利の導入は考えていない」と国会で発言していたのです。

これは、よく言えばサプライズへの演出、と考えられますが、正面から見ると単なる嘘つきですよね? 私はこれが黒田総裁が尊敬されない最大の理由だと思います。投資家は嘘つきが心底嫌いなのです。当然です。自分のお金が嘘のせいでなくなったら、誰でも憤慨しますよね、そりゃあ。

先日のG20で「金融に関する重要な決定は事前に世界中へ通知する」という決まりになったそうですが、その辺の事情もあるのかもしれませんね。

 

イエレンとドラギのやり方

対して、イエレンとドラギはそのような手法は決して取りません。ドラギは緩和策を数か月前から予言しますし、マイナス金利の導入に関しても、一年以上前から、導入に準備するように、銀行と投資家へ促していたのです。

イエレンも、利上げを1年以上かかて、ゆっくりと丁寧にマーケットに説明し、見事に成功させました。3月のFOMCでサプライズで利上げが発表される可能性が一部に言われていますが、今までの彼女の仕事ぶりからは、それはあり得ないと言えるでしょう。

次回以降の利上げの可能性の示唆、はあるかもしれませんが。

果たしてどちらの手法がいいのか? これまでの投資家の反応から見ると、明らかではないでしょうか。

 

これからの可能性

「余りにも日銀のマイナス金利の悪い部分ばかりが取り上げられてしまっている」

これは、朝倉慶先生もおっしゃっているのですが、その理由も結局は黒田総裁が投資家に嫌われてしまっているからではないでしょうか。誰だって、嫌いな人の言動には、ネガティブな揚げ足取りになり安いですよね。人の道理的には当然とも言えるでしょう。

分かりづらいとの声の多い「マイナス金利」ですが、私は投資知識のない日本の一般の人のイメージへの働き掛けは、金融緩和より遥かに大きいのではないかと思っています。

先日も、電車の中で、

「マイナス金利でそんなに金利が下がるのだったら、マンションを買おうかと思う」

と言っている、余り金融に詳しくなさそうな、お若い女性の方がいました。

 

今年の相場のこれから先はどうなるのでしょうか。

ドル円の予想に関して、はっきり言って大きく外している私ですが(笑)、株安の原因だった産油国の売りはだいぶ収まってきたようです。前回も書きましたが、その原因が無くなったとすると、きっかけ次第で、再び暴騰に向かう可能性もあるでしょう。

いくら黒田総裁が嫌われたとしても、国は無理やりにでも株高にしようとしているのですし、債券での運用が困難な今、ほっておけば株高にならざるを得ない状況なんだと私は思っています。

 

暴騰のきっかけはなにか、それはやはり、「消費増税凍結」と「日銀の金融緩和」ではないでしょうか。この二つがそろった時、タイミングとしては選挙前、株価は再び2万円を超えている、と言う可能性も少しばかりは考えてみてもいいかもしれません。