日本人に好かれ、アメリカ人に嫌われるオバマ

オバマがアメリカ大統領として初めて、広島の被爆地を訪れましたね。これは大いに安倍政権の支持率に好影響を与えたようです。そして、オバマ大統領への日本人の好感度も急上昇したことでしょう。オバマさんは「いい人」だ、そんな印象を持った方も多かったかもしれません。私もだいぶ前に記事で、「オバマ大統領にはあまり悪いイメージはない」と言うことを書きました。

そんな日本ではヒーロー扱いのオバマ大統領が、アメリカ本土では「第二次大戦以後、最低の大統領」と呼ばれていることをご存知でしたか? また、次期アメリカ大統領予備選で、共和党のトランプ氏が大躍進し、話題になっていますが、こんな一風変わった候補者が大躍進する理由はオバマ政治に対する不満が相当あると言われています。

そんな我々にはいいイメージのオバマがアメリカ人には嫌われる理由と言うのは、いったいどこにあると言うのでしょうか? その理由はそれそのもの、つまり「日本人にはいいイメージ」、このこと自体がアメリカでの不人気の理由と考えられるのです。

 

トランプの支持の理由

大統領候補の共和党のトランプ氏の勢いが止まらず、世界中の人を驚かせています。空気的には大統領に決まり! みたいな感じになってますね。初めは道化のような扱いで、早々に敗退すると見られていた彼が、なぜここまで支持を集めるのか。その理由について、いくつか当ブログでも論じてきましたが、支持されたのは、彼の特徴的な政治姿勢、発言です。

 

偏った発言

それは、時に強い反発、批判を引き起こす過激な物であるわけですが、しかし、それが強力な支持を受けていることも事実です。

過激な発言とは、偏った発言とも言い換えられる訳ですが、それはどのようなものでしょうか。あまりいいイメージではないですが、それもそのはず、偏った発言とは一部の人にとっては実際に不利益をもたらすものだからです。

 

対するオバマ

比較してして、現職のオバマさんはどうでしょうか。彼の場合はどっちかと言うと、誰にでも害のない、万人受けの綺麗な発言が多いと言えますね。悪く言うと、格好つけな発言が目立つとも言えるでしょう。

 

行動では傾くしかない

政治家がなんのために発言するかと言うと、国民に政策、つまりは自分の行動を説明するためだと言えます。そして、何のために行動するかと言うと、そのほとんどが何かの利益を得るためです。そして、そのために必要となるものが決断です。だから、なにも得ようとしなければ、決断する必要はないわけです。

「どうしよう」ずっと、迷っていれば何も手に入れられません。だから、優柔不断な人は何かを手にれようと言う欲望の薄い人、つまりは「いい人」だと言えるのですね。オバマ大統領は決断力のない、史上最弱の大統領とも言われているようですね。

発言は行動の説明です。偏った発言と言われる理由は、そのように行動すると言うことを普段から前もってはっきり表明している、と言うだけなのです。ですから、その行動の結果に不利益を被る人たちから反感を買います。

対して偏った発言のない人は、言わないだけか、そもそも予め決めていないかのどちらかです。決めていないと言うことは、行動を起こせないため、相手が不利益を被ることもありませんので、嫌われません。当たり障りのない発言しかしないと言うことは、結局はなにもしないということを言っているに等しいのです。行動で誰にも、何も不利益を生まない、と言うことはあり得ないからです。

偏らない発言をすることは出来ますが、偏らない行動に出ることは出来ません。何かを得ようとすることは、何かを捨てることでもあるからです。それこそが決断なのです。

 

トランプ氏の支持基盤

トランプ氏は対外政策では、アメリカの利益を最優先に行動することを強くアナウンスしています。また、国内では白人の所謂ブルーカラーの味方になることで、票を伸ばしています。前者はオバマが国際社会でいい顔をしてアメリカ国民に利益を与えられなかったことへの不満、後者は経済の格差が進み、そこから取り残された人々の不満、これらを代弁することが彼の支持基盤となっているのです。

私が今回注目するのは、このうちの前者です。決められない、優しい大統領は、国際社会の場で、利益を奪い取れない、「相手国にとって都合のいい人」であることを示しています。ノーベル平和賞を取ることも頷けると言う訳ですね。

 

いい顔しいの政治家が嫌われ始めた

国際社会で世界中の人にいい顔をする、と言うことは、自国の利益を優先しないと宣言するのと同意義であります。オバマが日本人にとって、あまり悪いイメージでない理由はここにあります。そして、この時期、世界のリーダーの面々は、そのような姿勢を取る方が多かったような気がします。ドイツのメルケルしかり、日本の安倍首相しかり。

メルケルは「難民を無制限に受け入れる」なんて、言っちゃってますからね。これはその典型です。難民を受け入れることは、間違いなく自国民の負担になります。立派な心掛けで、みんなが仲良くするのは理想だとは思いますが・・。

しかし、最近メルケルはそのせいで、支持率を急落させたと聞きます。

道徳に加勢するものは一時の勝利者には違ないが、永久の敗北者だ。自然に従うものは、一時の敗北者だけれども永久の勝利者だ

~夏目漱石 『行人』~

夏目漱石の小説『行人』の中にこんな言葉があります。メルケルやオバマが示した道徳は立派でしたが、それはやはり自然ではなかったと言うことでしょう。自国の利益を最優先にしてほしいという、ごく自然の大衆の感情が、彼らの支持を失わせたのです。

そんな世界のトレンドに嫌気を指してか、最近は世界各国で極右と言われる政党が支持を伸ばしている例が多いようです。そして、とうとうアメリカまでそんな思想を持っている政治家が人気を集め始めた訳です。これは人々の自然な感情とも言えますが、自国利益優先が強く押し出されると言うことは、争いのリスクを高めると言う点で、世界の潮流としては気になるところではないでしょうか。

そしてもう一つ、、そんな過激なリーダーを生むのは、常に我々大衆だということを認識しておくべきではないでしょうか。過去も含めて、彼らは、勝手に生まれ、勝手に進んだのではないのです。すべて、我々の求めに応じる形で生まれ、我々の求めに応じて動くのです。

世界中の人々が協調して仲良く暮らすと言う理想は現時点ではユートピア、幻想に過ぎないと言うことを表していると思います。

2017年1月26日追記

1月20日トランプ新大統領が誕生しましたね。前任のオバマがどう言う大統領だったかと改めて問われたならば、

「アメリカが怖い国だということを少しだけ忘れさせてくれた大統領」だった

と私は答えますが、みなさんはどうですか?

では、新大統領のトランプはどうだと言うと、ずばり、

「アメリカが怖い国だということを再び思い出させてくれる大統領」になるでしょう・・。