割れる意見を治めるのが政治家の仕事では・・

イギリスのEU離脱が国民投票によって決定し、世界中を慌てさせているわけですが、面白いと言ってはいけないのかもしれませんが、ツイッターなどで離脱に投票した人の後悔の声が結構出ていると言うことが話題になっておりますね。どちらか決めかねていた人たちが、「どうせ離脱にはならないだろう」と思い、離脱に投票してしまったなんて言われているようです。

事前の観測で残留有利に傾いたことが、却って離脱派を増やしてしまったのかもしれません。投資家だけでなく、イギリス国民自身も観測に振り回されてしまったということなのでしょうか。どちらにしろ、今回の方法が国の命運を決めるにしては、非常に危ういものだったと言えるでしょう。

キャメロン首相は残留を訴えていたわけですが、これは完全に失態かと思います。皆の意見が割れているからこそ政治家が必要なわけで、それを彼らの責任でうまく治めるのが彼らの仕事のはず、ですよね。それを国民に丸投げしては、こうなってしまっても致し方ないと思うところです。

 

 

イギリス国民はただ聞いてほしかった?

もしかすると、イギリス国民は本当はただその声を世界中の人に聞いてほしかっただけなのかもしれません。よく言うではありませんか。もし人から悩み相談を受けたら、

「決して否定せずに、解決策を示さずに、ただそれを聞いて、共感してあげればいい」と。

私はそんな気がしました。なぜかと言うとそんな事例と思われることが、すでにEUに於いて、一年ほど前に起きていたからです。

 

素晴らしい立ち回りだったギリシャのチプラス

それは2015年に世界の株式市場を混乱させたギリシャのEU離脱問題です。その時の主役は左派連合のチプラスでした。彼は、列強のEU諸国を相手に、

「救済は失敗した」
「われわれは国の主権を譲ることはない」
「ギリシャ国民は緊縮財政を直ちに廃止し、政策を変えることを強く求めた」
「そのため、失敗に終わり破壊的な結果をもたらした救済措置をまず停止する」

などとかっこいい台詞を次々と決め、国民のヒーローとなっていたのです。そして、国民自身も投票でEUを離脱しようと彼を後押ししました。私もそれを見て、彼は本物の革命家ではないか、と胸を躍らせたのです。しかし、結局最後に彼は最終的にはドイツ、メルケルの前に屈服し、公約を守るどころかEUの条件を丸のみしてしまったのです。

まあ、でも、ここまではよくある話ですよね。これにはギリシャ国民は激怒! チプラスは当然引き釣り降ろされて血祭りに! のはずでしたが・・ここで奇妙なことが起こったのです。彼の支持率はその後も一向に下がることはなく、高いままだったのです。

これには私も頭を悩ましました。ギリシャ国民はいったいどうなっているのか? それから色々と思案して、こう仮説を立てました。

「ギリシャ国民は最初から混乱と痛みを伴う本物の革命家など求めてはいなかったのだ」と。

チプラスのEUへの反抗は見せかけだけの嘘でした。平たく言えば彼は、単なる詐欺師だったのです。それが露呈しても彼が支持を失わなかったということは、ギリシャ国民は初めからそれが分かっていて彼を支持していたということになります。そして、チプラスに功績があるとすれば、世界を混乱させることによって、ギリシャ国民の思いをEUと世界中の人々に知らしめたということになります。そして、それこそがギリシャ国民のもっとも求めていたことだったのではないか、と。

 

アメリカ大統領選への影響は?

今回の国民投票がアメリカの大統領選で極端な発言を続ける共和党候補のトランプ氏を勢いづかせるという見解が直後にはみられました。しかし、イギリスの事態が逆にアメリカ人を冷静にさせるかもと言う見解も出てきているようです。イギリスの結果が、アメリカ人にとって一つの反省材料になることは間違いのないことでしょう。

 

そのドルへの影響を占う

そして、最後にそのマーケットへの影響を考えてみます。まず、こんな記事をご覧ください。

コラム:トランプ氏阻止へドル安続くか=池田雄之輔氏

今年に入ってからと言うもの、怒涛の円高が続いており、その裏にはアメリカ政治の圧力があるようだ、ということは当ブログでもお伝えしておりますが、筆者の池田さんによりますと、現在のドル安は「トランプ阻止のため」だというのです。この信ぴょう性については、正直私も完全には信じられないのですが、もし、本当にそうだとすると、大統領選でトランプが負けた場合、円高の圧力はだいぶ緩和されると言うことになります。

今後、トランプ大統領と言う最悪を織り込む形で円高が更に進む可能性はあるものの、既にドル円は下がりすぎ水準にあることから、行ってもそう深くはないだろうと予想できます。マネースクエア・ジャパンの吉田恒さんによれば、過去の円高局面での円高は期間としては1年~2年、下げ幅としては最低で25パーセント程度だったそうです。

そこから考えますと、大統領選挙の行われる今年11月以降には円高が既に転換していても不思議ではないということになり、底値は94円くらいということになります。ただ、既に下がりすぎている今年中にそんなに下がる気がしないのと、もちろん、トランプが大統領になれば、期間はもっと伸びて、底値は来年にかけ更に深くなると予想されます。

イギリスの国民投票の結果に対する世界の人々の反応をきちんと見ておくことがマーケットの予想にも役立つのかもしれませんね。私はトランプ大統領なしだと思うのですが。確率は2分の1なので今度こそ当たるかもしれませんが、マーケットの予想は当たらないでしょう(笑)。