いきなりですが、米露関係に改善の兆しが見える、こう書いたらどうでしょう? アメリカは昨年末に発表した安全保障戦略で、ロシアを最大の「現状変更勢力」と名指しし、つい先日には、トランプ政権がロシアが後ろ盾となっているシリアに、ミサイル数百発をお見舞いしたばかりです。

それはないのでは、と言うのが、普通の見方でしょうか。でも、今回のアメリカのミサイル発射に対するロシアのリアクション、なんか変じゃないですか?

プーチンは、こう言いました。「次やったら、許さないぞ」。

「へ?」私は、あまりに優しいプーチンさんに驚愕してしまったのです。

 

プーチンさんが突然・・

そして、こんな記事を見つけて更に驚きました。

プーチン大統領は米国との緊張緩和望む、シリア空爆後も

関係者1人によれば、ロシア大統領府は当局者に対して反米的な発言を控えるよう命じた

ロシア議会が16日に米企業への広範囲な制裁対抗措置を発動する法案を突如撤回した

~ ブルームバーグ ~

どうですか、これは。プーチンさん、突然一体どうしちゃったの? いつから、そんなにアメリカを大好きになってしまったの? 余りに支離滅裂なトランプさんにとうとう恐れをなしてしまったの?

いえ、きっと、違います。この深い訳をこれから説明させていただきたいと思います。

 

トランプ政権の「親ロシア戦略」

当ブログでは、世界情勢の重要な要素として、トランプ政権の「親ロシア戦略」について、度々解説させていただいておりました。例えばこれ。

グローバリスト勝利で株価は堅調か ~米国のアフガン新戦略の意味~

初めて来た方には、親ロシア戦略? なんだそりゃって方もいるかもしれません。それも無理はありません。この情報が普通に大手メディアで伝わることはほとんどありません。なぜなら、これには大きな抵抗勢力があるからです。

その証拠と言えるのが、「ロシア疑惑」と呼ばれる、なんだかさっぱりわからない噂?のようなお話です。

「トランプはロシアのスパイだ!」

「彼はプーチンに弱みを握られている」

「トランプはロシアと結託して選挙に勝った」

などなど、この辺りの幼稚な風説を、テレビなどで一度は耳にしたことがあると思います。もしかすると、信じてしまっていたと言う方もいるかもしれません。マスコミと言う権威が発すると本当っぽく聞こえるようなのです。

テレビという最大の公衆媒体に、こんなレベルの話が出てくることが、親ロシア戦略の邪魔立てが行われていることの証拠となっているのです。それは誰の仕業?と言うと、軍産複合体と呼ばれる組織です。

軍需産業を中心とした私企業と軍隊、および政府機関が形成する政治的・経済的・軍事的な勢力の連合体を指す概念

~ ウィキペディア ~

なぜ、彼らは、親ロシア戦略の邪魔をするのでしょうか。

平和は敵。テロ戦争で儲ける「軍産複合体」の正体

つまり、彼らにとって、国どうしの対立などどうでもよい。互いに儲けるためには、各企業の兵器がたくさん売れて紛争が増えることが望ましい。ライバルどうしでありながら、目的はひとつ。戦争で稼ぐという一点に尽きるのだ

~ まぐまぐニュース ~

アメリカとロシアの関係がよくなると、彼らの食いぶちが無くなるからですね・・。まあ、分かり安い。

ちなみに、こちらの記事で、イスラム過激派の「正体」についても、触れられています。事実、アメリカが安全保障の軸を東アジアに絞った途端、ISはあっという間にいなくなってしまいました。「やれるなら、さっさとやれよ」これは誰もが思う、真っ当な突っ込み。

ISが日本でテロを起こすんじゃないか、そんなことが本気で心配された時もありましたが、この「仕組み」を知っていれば、そんなことは突飛な空想に過ぎないのだなと思うでしょう。まったく世の中は複雑怪奇です・・。

 

シリアでの化学兵器疑惑について

トランプ政権がシリアにミサイルを発射した理由は、アサド政権が化学兵器を使用したから、というものでした。

これに対し、当ブログでは、昨年も含めて、アサド政権が化学兵器を使用した可能性はかなり低いと書いてきました。その理由は、アサドは地域を既に制圧しているからですね。アサドが使っているとすると、ミサイルを撃ち込まれる理由をわざわざ作っていることになります。

この考えはとても普通だと思うのです。しかし今回、異例な事態となっているのは、この「普通の考え」が、一般的に伝わって来ていることです。

欧米側の見解に疑問を持つ、ということは、これまで大手メディアにとって大きなタブーとなっていました。私たちには、基本的に欧米側に有利な情報しか入って来ません。彼らが言うには、イスラム社会とプーチンは悪魔で、欧米が常に正しいのです。

しかし、今回はどうも雲行きが怪しい。例えば・・

反体制派「化学兵器でっちあげ」

シリア反体制派の人権団体幹部は12日、共同通信に対し、首都ダマスカス近郊東グータ地区での化学兵器攻撃について「アサド政権に抵抗する反体制派への支持を結集するため、でっちあげられた」と主張し、政権側が使用したとの見方に強い疑念を表明した。幹部は反体制派の闘争を一貫して支援してきた人物。匿名を条件に電話取材に応じ、異例の身内批判を展開した

~ ロイター ~

反体制派の人物が、反体制派のでっち上げだと、内部告発です。

またまた、

米軍のシリア攻撃、「政権軍がサリン使用」の確証はなし

米軍などが13日に行ったシリア攻撃について、シリア政権が市民に対して神経剤のサリンを使用したという確証がないまま、米英仏がシリア攻撃に踏み切っていたことが、複数の関係者への取材で明らかになった

~ CNN ~

なんでそんなのリークしちゃうの~。

そして、日本のテレビ朝日でも解説者が、

「今回は、反体制派の仕業という見解もあるんです」

と伝え、高島彩アナが、「証拠もないのに、ミサイル撃って許されるんでしょうか!?」と、ど正論を披露する始末です。

とにかく、今回特異なのは、でっち上げが行われたかもしれないことではなく、それが私たちに伝わってきていること、なのです。

 

軍産複合体弱体化の可能性

これが何を表すかと言うと、トランプ政権内における、軍産複合体の影響力の低下です。事実、軍産系幹部と言われる、マクマスターさんは解任され、ケリー補佐官の影響力も低下していると言います。

そして、トランプさんはこう言いました。

「やっと望み通りの政権になってきた」

昨年の夏くらいまでは、トランプさんが押されっぱなしで、フリンさんやバノンさんなどの、親ロシア派の幹部が次々と失脚させられていました。しかし、今年に入ると、形勢は明らかに逆転。

そして、今回の攻撃には、英仏が参加してきていますが、トランプ政権内で分が悪いと踏んだ軍産は、英仏を巻き込んできたのではないか? と私は推測します。こう考えると、イギリスの毒ガス事件の謎も見えるような気もします。

そして、トランプさんが軍産複合体と言う巨大権力機構に対し、これだけの攻勢をかけられること、これが示すものは、彼の支援勢力はそれを上回る存在だろう、と言うことですね。

でっち上げだと、リークしているのは、これらの勢力だと想像することが出来ます。そして、プーチンさんが、今回妙に優しい理由は、トランプさんの「ロシアよ、これからミサイルが来るから準備しろ!」の言葉通り、ロシアに最大限の配慮が行われた上でのことだったからでしょう。

一説によると、ミサイルはほとんどが、撃ち落されたそうです。攻撃が遅れた理由は、化学兵器使用の精査のためと言われていましたが、きっと、ロシアにその時間を与えていたのでしょう。

 

なぜ、親ロシア戦略なのか

そして最後になぜ、トランプ政権は、親ロシア戦略を取ろうとしているのでしょうか。

トランプの反中は「本物」、異常なプーチン愛は「戦略」だ

「最大の敵に勝つために、その他の敵と和解する」

これが常に米国の戦略の根底にある。だから、米国が「中国に勝つために、ロシアと和解する」のは必然なのだ

~ ダイヤモンド・オンライン ~

それは何度も繰り返し、お伝えしているこちらの北野先生の記事をお読みいただけますと、一発でわかりすぎるほどわかります。名付けてドラゴンボール作戦! フリーザを倒すためにベジータと仲間になる、ということです(笑)。

以上の情勢から、当ブログでは、そう遠くないうち、電撃的に米露和解が進む可能性がある、と読みます。ですから、会社や学校で、「米露は和解する」と言っておきましょう。

日本のメディアは軍産の影響が色濃く、「トランプは馬鹿だ」の大合唱、実はこんな高度な戦略が敷かれていることなんて、ほとんど知られていないのですから、一目置かれる存在になれること請け合いです(笑)。

日本の安全保障の観点からも、プーチンさんにはぜひ、お仲間になってもらいたいですね。しかし、実際のところは、まだ油断が出来ないでしょう。

つい先日も、ロシアが中国と軍事演習をした、というニュースを見ました。果たして彼は敵なのか、見方なのか、決選の運命を握る、小早川秀秋状態と言ってもいいかもしれません。