さて、突然ですが、衆議院解散になりましたね。自分たちの延命だけを考えた解散だ! とか言われておりますが、私もその通りだと思います。

「アベノミクス」の是非を問う、とか言ってますが、実際行われたのは、金融緩和を日銀がやったのと、GPIFの株式購入比率をあげただけで、肝心の構造改革にはほとんどと手つかず・・・やってもいないものの是非を問うと言われても、と思うのは、私だけではないようで、ネット上などでも批判が多くみられます。

元々、株価を吊り上げ、なんとなくよくなっているというイメージで国民の支持をうけていた安倍政権ですが、今回のGDP発表の明確な数字で、そんな夢を見ていた国民は冷水を浴びせられてしまいました。安倍政権は今なら選挙で勝てる! と思っているようですが、果たして本当にそんなにうまくいくのでしょうか? その未来を名作文学の名台詞から占ってみたいと思いました。

「かつてはその人の膝の前に跪いたという記憶が、今度はその人の頭の上に足を載せさせようとするのです。私は未来の侮辱を受けないために、今の尊敬を斥けたいと思うのです。私は今より一層淋しい未来の私を我慢する代わりに、淋しい今の私を我慢したいのです」

「あなたは熱に浮かされているのです。熱が冷めると厭になります。私は今のあなたからそれほどに思われるのを、苦しく感じています。しかしこれから先のあなたに起こるべき変化を予想して見ると、なお苦しくなります。自分が欺かれた返報に、残酷な復讐をするようになるものだから」

-青空文庫『こころ』-

これは夏目漱石の名作『こころ』に出てくる先生の名台詞です。もし、詳しく知りたい方がいらっしゃれば過去の記事を見ていただきたいのですが、これはごく簡単に言うと、

「人々の期待を裏切ったら、やがて残酷な復讐を受けるよ」と言うことです。

 

安倍政権は世の中の景気、我々の生活ががよくなるという過剰な期待を国民に抱かせ、株価をあげることでその夢を見続けさせ、支持を取り付けてきました。しかし、実際は大々的に宣伝していたその成長戦略と呼ばれる痛みを伴う構造改革にはほとんど手を付けておらず、増税によって景気の回復どころか後退に向かうような始末です。

GDPの発表は、国民にとってその夢を覚ます、期待が裏切られたと感じさせるのに十分なインパクトがあったように思います。そして、逃げるように解散。本当にこんなやり方で思惑通り勝てるのか? 確かに対抗馬はいません。しかし・・・。

 

この一連の流れは私のブログで取り上げた例の小保方氏事件に似ています。過剰な期待を高めすぎたばっかりに、死人を出すまでの残酷な復讐を世間から浴びた小保方氏。安倍政権だけが特別とは思えません。

私は『こころ』の先生のおっしゃる通りになると思います。安倍政権の膝の前に跪いた国民が、今度は安倍政権の頭の上に足を載せさせようとするのではないでしょうか。どうしてか? それが「こころ」だからです。

それが今かはわかりません。しかし、安倍氏が「今より一層淋しい未来の私」になる日はそう遠くない未来にやってくるのでしょう。名作文学の予言力を舐めてはいけないと思いますが、さてさて、どうなることやら。

 

追記

私の予想は大きく外れ(笑)、自民党の圧勝となりました。

ですが、負け惜しみではないですが、私の言ったようなことは共産党の躍進と沖縄での自民党の惨敗というところに表れていたようです。今は、ほんの小 さな波です。ただ、やがてこの小さな波が抑えきれない大きな物となって自民党に降りかかる可能性はそう小さなものではないのではないでしょうか。

 

選挙特番で櫻井よし子さんが「安倍さんの言っていることは正しいが、言っている成長戦略が一切行われていない」と言っていました。私もその通りと思います。ネットなどでもいろいろ見てましたが、面白いことにファイナンス系の掲示板で安倍さんへの批判が多く見られたのです。

投資家のための政権みたいなものなのに普通の人より、投資家に嫌われている・・・。それはおそらく、あれだけ期待をさせたのに、一向に進まない政策への怒りだと思いますが、投資家でない方は、まだそういったことには気が付いていないのでしょう。

 

『こころ』の中で先生が私にしつこく尋ねるこんな言葉があります。

「あなたは本当に真面目なんですか」
「あなたははらの底から真面目ですか」

安倍政権の自ら宣言した政策に対する対応は真面目ではなかったと私は思います。そして、今回の解散総選挙の理由も多く言われているように真面目ではありませんでした。

今の政権がその意図通りに長期政権を築けるかどうかは、小難しい理由ではなく、「やると言ったことはやる」、「真面目に取り組む」というごく当たり前のことをするかどうかではないでしょうかね。