株価が乱高下を続けていますね。つい10月には日経平均株価が年初来高値を更新し、25,000円を伺える位置につけていたと言うのに。日経平均株価だけではなく、アメリカ、特に欧州株が酷く売られ、他にもコモディティ市場も総崩れ、世界的にリスク資産が崩落しています。

そして、つい先日には、米国の長短金利が逆転する、「逆イールドカーブ」が発生し、とうとう世界経済も後退局面入りするのではないか、との懸念が市場関係者に広がりました。

しかし、これらは当ブログを訪れてくれる方は既にご存知のこと。「世界経済はリセッション入り」する可能性が極めて高いことは、従来お伝えしてきた通りです。

日本はデフレに戻るのか?

さて、世界経済が減速に向かうとして、当然日本経済もそのリスクを負うことになりますよね。過去最高の企業業績に支えられた日本の好景気が失速に向かうとすると、一体どうなるのでしょうか。つい先日、日銀の副総裁がこんなことを言っていました。

経済へ下押し圧力あるとデフレに戻る可能性ー若田部日銀副総裁

日本銀行の若田部昌澄副総裁は5日、新潟市内で講演と記者会見を行い、米中貿易摩擦の長期化などの影響で日本経済に下押し圧力が掛かった場合、デフレに逆戻りする危険性を指摘した上で、「必要があればちゅうちょなく追加緩和すべきだ」との考えを示した。

~ ブルームバーグ ~

さて、どうでしょう。今回の記事の肝なんですが、「これ、違うんじゃないの?」と、若田部副総裁に異議を唱えるつもりです(笑)。私はこう思うのです。これからやって来る景気後退局面は、「デフレに逆戻り」するのではなく、スタグフレーションに陥るのではないか。そして、デフレに逆戻りするのならば、まだその方がいいと。

ちなみに、スタグフレーションとは、

スタグフレーションとは、景気が後退していく中でインフレーション(インフレ、物価上昇)が同時進行する現象のことをいいます。

~ SMBC日興証券 ~

景気が悪いにも関わらず、インフレが進行する状態のことですね。で、こちらの解説を更に読み進めてみますと・・

通常、景気の停滞は、需要が落ち込むことからデフレ(物価下落)要因となりますが、原油価格の高騰など、原材料や素材関連の価格上昇などによって不景気の中でも物価が上昇することがあります。これが、スタグフレーションです。景気後退で賃金が上がらないにもかかわらず物価が上昇し、資産価値が減っていくという生活者にとって極めて厳しい経済状況といえます。わが国では、1970年代のオイルショック後にこの状態となっていました。

私が心配しているのは、まさにこの部分になります。ね、これだったら、全然デフレの方がいいでしょう?

賃金不上昇、インフレの根拠

賃金が騰がらず、インフレが進行する、我々庶民にとってまさに地獄の社会状況が迫っているのではないか、と言う根拠をこれから記してきます。

賃金が抑制される理由

ここ数年、各国の中央銀行は同じ悩みを抱えていました。それは、「賃金上昇が鈍く、なかなかインフレが起きない」と言うことです。先進国の中央銀行は、停滞したデフレ経済から脱却するため、過去に例を見ない大規模な金融緩和策を実行していました。

そのおかげで経済は順調に回復、アメリカはいち早く金融政策の正常化に舵を切りました。鮮やかな手腕で、金融緩和の終了と利上げの開始を成功させた当時のFRB議長、ジャネット・イエレンさんはこう言いました。

「経済の回復とともに失業率が低下、それが賃金上昇に繋がり、やがて緩やかにインフレを引き起こすだろう」と。

その後、確かに彼女の指し示す通り、経済は順調に拡大、失業率は3パーセント台まで下がりました。しかし、どういう訳か、待てと暮らせど、その後の賃金の上昇とインフレがやって来ないのです。そして、とうとう彼女はこう言いました。「その理由は謎だ」。

しかし、私はこう勘ぐりました。経済アナリストとして超一流であるジャネット先生が、その理由を分からないはずはない、彼女は言えないだけだと。ですので、私が代わりにこう書いたのです。

人手不足でなぜ賃金上昇が鈍い? その本当の理由をこっそり教えます

賃金が上がらない理由は、「労働力のグローバル化」、つまり外国人労働者の受け入れにあるぞ、とですね。当時から、特に欧州では、移民に対する反感が叫ばれ、「彼らに仕事を奪われた。彼らのせいで賃金が下がった」という国内労働者たちの強い不満が、国を揺るがす社会問題になっていたのです。

これがいいのか、悪いのか、ということは私には分かりませんが、外国人労働者の受け入れで賃金が下がる、もしくは上がりづらくなるのは、事実です。なぜなら、これは需要と供給の理屈で、全く当たり前の話だからです。

さて、これからの日本で賃金が上がりづらくなる理由は、もうはっきりと分かりましたね。ちょうど昨日、外国人受け入れ拡大に向けた改正入管法が成立したところです。


インフレになる理由

次に、もう一つの懸念のインフレを見てみましょう。当ブログでは、2016年の秋、ヨーロッパ中央銀行が金融緩和の限界を認めたことがきっかけになり、世界経済はデフレからインフレへの歴史的な転換を遂げた、と書いてきましたが、その大きな流れは現在も変わりません。

更に昨今では、政治状況が、更にインフレを加速させる大きな理由を与えています。皆さまご存知の米中貿易戦争、これが収束する気配は全くありません。お互いに関税をかけ合うと言うことは、当然、商品が値上がりすると言うことです。

また、欧州においても、グローバリズムを牽引するEUが、明らかに弱体化してきており、特にイギリスのEU離脱は大問題で、これをきっかけにEUは分断に向かう可能性が高いと見た方がいいでしょう。人と物の移動が制限される方向ですから、これもインフレ要因です。

そして、これらに比べて地味ですが、確実にまずいのがこちらです。

ステルス値上げも限界か 原材料費高騰でアイスなどの値上げ相次ぐ


菓子メーカーがアイスなどの商品価格を次々に値上げしています。これまでは、同じ値段で内容量を減らすというステルス値上げで誤魔化してきましたが、原材料価格の上昇が激しく、こうした場当たり的な対応は難しくなりつつあります。

~ YAHOO ニュース ~

このブログでも何度か指摘してきましたが、この誤魔化しはヤバイです。このステルスインフレは、統計に出てこないため、私の目は誤魔化せなくても、日銀のおじさん達は、あっさりと騙されてしまうからです(笑)。

価格を引き上げると売上が減るリスクを抱えることになりますが、それにもかかわらず、名目上の値上げを実施するということは、コストの上昇が予想以上に進んでいることを示しています。こうした動きが続けば、やがて物価全体が上昇を開始し、インフレになる可能性が高まります。その時までに景気が回復していなければ、スタグフレーション(景気が悪い中でのインフレ)に陥る可能性も出てくることになるでしょう。

デフレに戻るので追加緩和? 馬鹿を言っちゃいけません。日銀は既に異常すぎる緩和を実行していますし、しかも、この政策には出口が全くないのです。本当はそこにあるインフレも彼らの目には入らず、この異常な政策はだらだらと続けられていくのです。

本当にスタグフレーションになった時、彼らに打つ手は全くありません


日本の企業、投資家は楽観だが

ロイターやブルームバーグなどの海外大手メディアにて、世界経済に悲観的な内容の記事が目立つようになって来ました。ですが、今年やけに強気な金融アナリスト達は、皆こう言います。悲観に満ちているから織り込んでいる、ここは「買い」だと。

しかし、本当にそうでしょうか。

ロイター企業調査:来年の日本経済、7割が一段の成長見込む

2月ロイター企業調査によると、来年の景気は海外での減速懸念が広がっているの比べて、国内景気はそれほど減速懸念は広がっておらず、今年と同程度かそれ以上の成長率になるとの見通しを示す企業が7割を占めた。政府が大規模な景気対策を打ち出していることも影響している可能性がある。

~ ロイター ~

私に言わせますと、「この見通し甘くね?」です。やはり、彼らは悲観に傾いてなどいない。株価に関しても、ここ数年続いてた上昇相場の調整とは、本質的に異なっていることを理解すべきでしょう。

実際、この数字が逆転するくらいにならないと、株価、経済の底打ちは難しいと思います。

やはり、残念ながら、来年の経済見通しは暗いと考えざるを得ない昨今の状況です。