東証一部上場企業の3月期の決算発表がピークを迎えています。結果は極めて良好で、最終利益の合計は過去最高を更新しそうとのことです。これを受けて、世界情勢の不透明感から、下がった株価も大きく戻りを入れています。

その原動力となっているのが、お金が余っている企業による自社株買いです。米アップルが日本円で11兆円に及ぶ自社株買いを発表したことは、大きなニュースになりました。これで今後ますます、世界経済、日本の経済はよくなっていくだろう!そんな興奮も冷めやらぬ中、こんなニュースが・・。

内閣府が16日発表した2018年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.2%減、年率換算で0.6%減だった。15年10~12月期以来、9四半期ぶりのマイナス成長となった。野菜やガソリンなど身の回り品の値上がりで個人消費が低調だったほか、住宅投資も落ち込んだ

~ 日本経済新聞 ~

あれ? 個人消費が低迷で、9期ぶりのマイナス成長・・。なんか、イメージと違います。これを見ていると、日本の景気は本当に大丈夫なんでしょうか、と言う気にさせられますよね。

経済アナリスト達の大半は、世界経済は恒久的に明かるい、と見ているようですが、もしかすると、景気の拡大局面が続くかどうか、今が瀬戸際なのかもしれません。

 

低インフレの謎を解く

「緩やかなインフレが景気拡大をもたらす」、ここ数年前、世界の中央銀行は口を揃えてこう言っていて、そのための金融緩和を拡大させていました。そして、つい一年前には、景気は順調に拡大し、とうとうインフレが起きそうだから、緩和を終了させますよ、と。

当ブログの経済の大先生とさせていただいていて、昨年2月でFRB議長を退任された経済学者のジャネット・イエレンさん。彼女は、近い将来、失業率の低下が賃金上昇を招き、それがインフレを引き起こすはずだと主張されてしいました。

その後、確かに失業率が低下したものの、賃金上昇が思ったほどに起こらず、インフレもあまり進まない状況が続いていました。そして、とうとう、「その理由は謎だ」と、おっしゃいました。

当ブログは僭越ながら、賃金上昇が起こらない理由をこう分析してきました。

人手不足でなぜ賃金上昇が鈍い? その本当の理由をこっそり教えます

これがあっているかの判断は皆様にお任せするとしまして、最近の低インフレのワケをもう一つ見つけたような気がしてます。それが、所謂「ステルス値上げ」と言うやつです。

ステルス値上げとは?

日本でもそういった「ステルス値上げ」は多数見られる。製造コストは上昇しているが、販売価格は引き上げたくないという企業の常とう手段である。英国では「シュリンクフレーション」(縮みながらの値上げ)と呼ばれている

~ HUFFPOST ~

私は最近、久しぶりにコンビニでお弁当、おにぎりを購入する機会があったのですが、驚きでした。まあ、ずいぶん小さくなったものだと。そして、この時こう思いました。

腹八分目で健康にはいいかもしれないけど、経済にとってはよくなくない?

お客様の反発を恐れた企業は、ごまかしの手段に出ている、と言うことですよね。すなわち、日銀の統計以上に実はインフレが進んでいることを表しているということです。ご存知の通り、日銀はインフレを誘発するため、異次元緩和と言われる大規模すぎる金融緩和を続けています。黒田総裁はこう言います。

「インフレは起きていないので、当面異次元緩和を継続します」

しかし、そもそも、「インフレは起きていない」という、この前提が間違っている可能性があるのではないでしょうか。おにぎりが小さくなっていることは、各種インフレ指標に反映されていないでしょうからね。これは偽計である可能性があり、非常に危険です。ただでさえ、常軌を逸したと言ってもいいくらいの政策をつづけているのに・・。

小さいおにぎりには、

「お腹が満腹にならないじゃないか!」という他にも、ステルスインフレと言う、大問題が潜んでいる可能性が十分に考えられるのです。

 

値上げが進んでも賃金上昇が起こらないと・・

一方、内容量を減らすのではなく、値上げするケースも増えており、「賃金はあまり伸びない中、ポンド安による生活コストの上昇が消費を弱めるのではないか」という心配が台頭してきている

これはイギリスの話ですが、当然日本も一緒です。と言うか、冒頭で伝えたGDPに既に結果として表れてしまっていますよね。更に最近になって原油価格が急上昇し、4月から各製品が値上げラッシュとなるなど、ステルス以外の値上げも実際に進んでいるようです。

そんな中、賃金は、一部でアルバイト時給の高騰がみられるものの、本格的な上昇にはつながっていません。社会保障費も騰がる中、私たち庶民の生活は苦しくなる一方です。

大企業はいいですよね。業績は過去最高益を連発し、今後の見通しも明るく、順風満帆です。少しはその恩恵を私たちに分けてよ、こう思いたくなるのは当然です。今の経営者は、賃金の上昇を渋り過ぎなのです!

これは私のような一流ではない労働者の妬みに過ぎないのでしょうか。いえいえ、経営者の皆さん! 実はそうとも言えないかもしれませんよ。先程の記事のこの部分を読みました?

生活コストの上昇が消費を弱めるのではないか

物を買うのは誰でしょうか。残念ながら、今の日本は(世界も)、消費は弱って当然の構造になっています。このままの歪な状態が続いていると、今の企業の好況はもう長くはないかもしれない、私はそう懸念し始めています。

 

ヘンリー・フォードの経営思想

では、どうすればいいのか、ヒントをくれるのはこの人かもしれません。アメリカの自動車王と呼ばれたフォード・モーターの創始者ヘンリー・フォードさん。

労働者に高い賃金を支払う「賃金動機」は労働者の生活水準を向上させ、雇用の増大に繋がることから企業本来の社会的な存在根拠を示すものであると考えていました

高い賃金をもらった労働者たちは、その賃金でフォードの安価なT型自動車を買うことができるようになりました。こうして労働者の収入が増えることで自動車の需要が増え、この需要を革新的な大量生産で、さらに自動車の製造コストを下げました。結果、自動車の価格がさらに下がり、自動車が売れます。このような富の循環が起き一部の金持ちの贅沢品であった自動車がアメリカでは大衆向けに大量生産される商品となったのです

~ ザ・ニュー・スタンダード ~

ヒントと言うか、その答えがここには書かれているような気がしませんでしょうか。これこそが、今、世界の経営者、資本家に求められる姿勢なのではないでしょうか。

 

そうは書いたが、結局・・

と、ここまで書いていて何なのですが・・フォードさんの経営姿勢の実践は、まず起こらないだろうな、と少々、悲観的に考えています。と言うのも、現代社会は貧富の差の拡大が問題になっていますが、これから富の還元が行われるよりも、この差がもっと拡大していく可能性の方が高いのではないか、と私は思っています。

経済予測において、抜群の成績を収めていたイエレンさんの予測が外れた理由は、ずばりこうではないでしょうか。

今の経営者、資本家には、利益を労働者に還元する気概がない

現在の大富豪たちに、労働者に富を還元するような姿勢は全く感じられません。「ベーシックインカム」という彼らの提言には、最低限の施しでごまかそうと言う魂胆が丸見えです。

「ただでもらえるのか!」と従順に喜んではいけません。それは元々彼らが、みんなから蒐集したものなのですから。私も富豪だったらきっと、同じことをするのかもしれません。

だから、資本主義は最終的に終焉に向かう・・。

これは人間の合理性の法則とも言っていいものだと思います。最も優秀な合理性は、全てを独占し得ることにより、最終的に停止するしかないのですから。